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ニコン単焦点レンズで撮ったポートレートについてのまとめ

ニコンのFマウントレンズ1.8Gシリーズは、他メーカーに比べて価格が比較的に安く、単焦点レンズを揃えやすいのがよいところです。

 

私は、私にとって初めてのフルサイズ機であるD750を買ってから、ズームレンズよりも先に、20mm、24mm、28mm、35mm、50mm、85mmの単焦点を買い揃えていきました。

 

ズームレンズより単焦点レンズが優れているのは次のようなことです。

 

1.画質がよい。画像にキレがあり、解像度が高い写真を撮るときに有利。また、歪みが少なく、さらにカメラ本体の歪み補正機能を組み合わせると、画像周辺部まで正確に写すことが出来る。

2.f値が明るいので、広角のレンズでもボケ効果を使える。

3.レンズが軽いのでフットワークがよくなる。腕が疲れないから撮影に集中できる。

4.画角や構図は足を使って移動することによって決めるため、焦点距離の違いによる構図の引き出しが増える。

5. レンズの設計に無理が無いため、逆光などの悪条件での成功率が高い。

 

 

本記事ではレンズを買った順番に書いていきます。

 

50mmの単焦点レンズ

 

フルサイズカメラのD750を買った時に、最初に勝ったのは50mmの単焦点レンズです。ニコンの50mmf1.8Gは、単焦点レンズの中で最も価格の安いレンズです。

 

 

50mmはファインダーを覗いたときに、見た感じが実際の視野角に近いレンズです。またf値も明るくて、一眼レフカメラらしいボケを楽しむこともできます。

 

単焦点レンズを最初に買うにはとても良いレンズだと思います。一点だけ気を付けないといけないのは、日本の家屋は狭いため、部屋の中で家族を撮ったりするのに、50mmは画角が狭くて使いにくいということ。家族写真を目的にする人は、35mmや28mmの単焦点を使ったほうが良いと思います。

 

私が50mmという焦点距離で良いと思うのは、人物のプロポーションを正確に撮影できるところです。

 

 

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上の写真は白ホリを背景にした全身写真。50mmのレンズと複数のストロボをつかって撮影しました。

 

35mm以下のレンズを使って人物を撮影すると、頭が大きくなったり、足が長くなったり、デフォルメされた写真になります。

 

50mmで撮っても、椅子に座ったモデルを低い位置から撮ると、顔が小さく撮れたりするのですが、だいぶましで不自然な感じにはなりません。

 

50mmは人物のスタイルを正確に撮るときの最低限の焦点距離だと思います。全身を50mmで撮影する場合は、被写体と3メートルくらいの距離は必要となります。より正確に撮ろうとすると、85mmや105mmのレンズを使うほうがよいのですが、被写体とカメラの距離がさらに必要になります。広いスタジオはレンタル料金が高いです。

 

ただし、50mmを使っても、身長の低いモデルさんを背の高いカメラマンが見下ろすように撮影すると、頭でっかちで、脚が短く見える写真になってしまいます。カメラの高さはモデルの腰の高さで撮るのがよいです。

 

それと、一眼レフのボケを安い価格で楽しめるのが、50mm単焦点のいいところ。人物の背景がごちゃごちゃしていても、明るいレンズのボケを使えば綺麗に撮れるので、つい開放ばかりで撮ってしまいがちです。

 

その結果ピントがいまいちな作品を量産してしまいます。手前側の瞳にピントをあわせなければなりませんが、自分ではちゃんと撮っているつもりでも、奥の瞳になっていることがあります。

 

 

ポートレートを撮影するときは、構図やモデルさんのポーズや表情が大事です。指示を出しながら、手持ちで毎回確実に瞳にピントをあわせるのは、かなりの集中力が求められます。

 

アマチュアカメラマンは、開放でのボケを使った写真を好む傾向があります。手軽に綺麗な雰囲気の写真が撮れるからです。プロのカメラマンがどれくらいの絞りで撮っているのか調べたところ、最低でもf5.6で撮る人が多いようです。照明を明るくしてf7~11で撮るプロも多いみたいです。写真ではないですが、映画の黒澤監督も絞って撮っていたそうです。そのぶん照明を明るくして役者が暑がっていたとか。

 

プロにとっては、ピントが外れた写真は使えない写真になってしまうということ、撮影場所や背景にこだわっていることなどが理由だと思います。アマチュアは楽めればいいので、ボケを多用してもよいとは思いますが、写真が上手くなりたいのであれば、ボケだけに頼らず、画角による構図や、モデルさんのポーズ、光などを工夫したほうがよいと思います。

 

私は他のレンズよりも先にスピードライトを複数台購入しました。

 

また、ニコンの場合、50mmの単焦点はf1.8Gとf1.4Gの2種類あります。50mmのが画角が好きなので、私は両方持っていますが、新規に購入される方は安いf1.8Gでよいと思います。

 

 

85mmの単焦点レンズ

 

50mmの次に、85mmの単焦点レンズを買いました。85mmもf1.8Gであれば値段が安く、買いやすいレンズです。

 

 

 85mmは屋外ポートレート撮影で活躍します。被写体とカメラマンとの距離が適度に離れますので、モデルさんに撮影のプレッシャーを与えることがありません。

 

また50mmより、ボケがとても綺麗に出ますので、モデルを際立たせたいときに良いレンズです。屋外は被写体との距離を自由にできるので、バストアップから全身の写真までいい感じで撮れます。いつも開放近くで撮るのでなく、背景をみながら絞りをいろいろ変えていくと、撮影が単調にならなくなります。

 

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屋外でのポートレート撮影で、最も気をつけるのは太陽光による影の入り方。太陽が上のにある昼間で、陽の光があたった顔を撮ると、目や鼻下に影が入ってしまい、綺麗に撮れません。

 

そういうときは、レフ板を使って、下から光を当てるとよいのですが、一人で撮影しているとレフ板を使うのはなかなか手間がかかり難しいです。ストロボを当てたり、いろいろと試してみましたが、光が固くなったり、不自然な感じになりました。

 

カメラマンが一人で天気のよい日中に人を撮影するには、木陰で撮るか、午前中や夕方や、曇り空とときなど、とにかく太陽の光を考えて撮ることが大事だと思います。どのレンズでも同じことですが、85mmを屋外でうまく使う秘訣だと思います。

 

85mmはポートレート撮影にちょうどいいレンズなので、最初は重宝していましたが、しばらくするとあまり使わなくなりました。構図が単調になりやすくて、ボケも飽きてしまったからです。

 

24-70mmf2.8Gを手に入れると、さらにこのレンズの出番が減り、70-200mmf2.8Gも買ったら、完全に85mmを使うことが無くなってしまいました。勿体ないです。ズームの大三元レンズをいずれは買おうと思っている人は、85mmを無理して買う必要はないのではないかと思います。

 

35mmの単焦点レンズ

 

85mmの次に買ったのは、f/1.8Gシリーズの35mmです。これもリーズナブルな価格ですので、購入しやすいレンズ。

 

35mmは標準レンズともいわれていますが、広角効果がわかりやすいレンズなので、私は広角レンズと思っています。

 

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例えば、こういう構図にして撮ると、脚の長さが強調できる写真になります。いい感じでプロポーションをデフォルメできるので、最近のファッション・フォトグラファーは、35mm単焦点レンズを使っている人が増えているそうです。

 

 

聞いた話では、50mmが好きな人は35mmをあまり使わない、35mmが好きな人は50mmを使わない、という傾向があるようです。

 

私も最初50mmレンズが気に入って、50mmばかりを使っていたせいか、35mmを使うと、何を撮っても画像に違和感を感じるようになってしまいました。画面に何か気持ち悪さを感じるのです。なので、35mmのレンズを買ったはいいものの、しばらくすると全く使わないようになってしまいました。

 

しかし20mm~28mmの広角レンズをよく使って、50mmレンズの使用頻度が少なくなってきた後に、35mmレンズを使ってみると、すごく使いやすい画角のレンズだと思うようになりました。

 

もし最初に35mmレンズを買っていたら、50mmを使いにくいと思ったと思います。

  

 ニコンの35mm単焦点には、f/1.8Gとf1.4Gがあります。f1.8Gは、価格を抑えるためにナノクリスタルコートが塗布されていないので、屋外での逆光撮影では35mmf/1.4Gのほうがよさそうです。

 

でもf1.8Gのレンズ設計も、なかなか優秀で、時々はっとする写真が撮れることもあるので、今ではお気に入りのレンズです。屋外でのポートレートで、一本だけ単焦点レンズを持って行ってよい、といわれたら35mmを選びます。

 

28mmの単焦点レンズ

 

35mmの次に買ったのは28mmのレンズです。

 

 

 

28mmは旅行のときにちょうどいい焦点距離。家族と背景をバランスよく配置できます。ポートレートを撮るときに、わざわざ28mmの単焦点を選んでで撮影する人はあまりいないと思いますが、私は何度も28mmで撮影しました。

 

広角ではありますが、構図を工夫すれば顔の歪みが気にならないポートレート写真を撮ることができます。例えば、以下の写真のように顔が中央になるようにすると、構図に大胆さを出しながら、女性のポートレートを美しく撮ることが出来ます。

 

 

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ニコンの28mmf1.8Gは、発色がとても綺麗で、解像もよく、撮影結果をみるのが毎回楽しみなほど。

 

話しはかわりますが、単焦点のレンズで撮り方を工夫をすれば、別の焦点距離のレンズで撮ったような写真を撮ることができます。

 

例えば50mmレンズは、85mmや35mmで撮ったような感じで撮影できますし、35mmレンズであれば、50mmや28mmっぽい撮影をすることができます。したがって単焦点のレンズを組み合わせて持ち出す時は、50mmと35mmを一緒に持っていくことはありません。50mmの単焦点のお供には28mmを持っていきます。この理屈でいうと、35mmレンズのサブは24mmか85mmになりますね。

 

街撮りスナップは、一番28mmが撮りやすいです。主題や背景のバランスが良いです。どんな状況でも使える万能の焦点距離という感じなので、お気に入りのレンズのひとつです。

 

20mmの単焦点レンズ

 

28mmの次に20mmのレンズを買いました。

 

 

ニコンの単焦点レンズシリーズの中では最広角のレンズです。このレンズは値段も少し高いので、買う時に思い切りが必要でした。

 

買ってよく使うのでしたら買えばいいのですが、広角レンズは主に風景を撮るレンズ。私は風景写真を撮ることがほとんどありません。風景写真って天気、季節、時間によるところが大きいじゃないですか。撮る時間や状況を自然にあわせないといけないため、私にはあわない被写体です。

 

ただ広角レンズの画角を頭に入れたい、広角レンズを使ってみたい、という欲求が強かったので、思い切って入手しました。

 

購入後はやはりポートレート撮影で使いました。20mmという広角でポートレート。アマチュアカメラマンでは、ほとんどいないと思いますが、広角を使ったファッションフォトで有名なカメラマンがいます。ジャンルー・シーフという人です。彼は21mmのレンズを使って様々な構図のポートレートを撮りました。写真集を見ると、広角ってこんなに面白い写真が撮れるのかと参考になりました。

 

ちなみに昔は21mmというレンズが当たり前だったのですが、ニコンが20mmを出してから、20mmが標準になったらしいです。

 

下の写真はそのジャンルー・シーフ風に撮ってみたもの。

 

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人物を低いアングルから撮ると、ダイナミックな構図になります。地面すれすれで撮るには、D750のバリアングルモニターが活躍しました。

 

広角になればなるほど、歪みやすくなりますが、さすがはニコンのレンズ。広角でも歪みが最小限のレンズです。

 

ただし広角は構図が命。じっくりと考えながら一枚一枚を丁寧に撮らなければいけません。買ったはいいものの、使用頻度はそれほどありません。広角は背景にもピントをあわせるため、絞って撮るので広角単焦点よりも広角ズームでよいような気もします。

 

24mmの単焦点レンズ

 

最後に24mmf1.8Gです。このレンズは、f/1.8G単焦点レンズシリーズの最後に出たレンズです。

 

 

 

すでに20mmと28mmを持っていたので、このレンズを買う必要はないのではないか、お金が勿体ないしと長い間迷いましたが、やはりf/1.8Gシリーズをコンプしたかったので、結局は購入してしまいました。

 

購入してからも、このレンズを持ち出す機会がなく、しばらく防湿庫に入れっぱなしでした。ある日ポートレート撮影があったので、使ってみるといろいろと発見がありました。

 

まずは広角の4mmの差。これは少なくないということがわかりました。20mmのレンズを使うと、かなりわざとらしい広角の画面になってしまいますし、28mmの広角では平凡な画面になりがちです。

 

そこを24mmで撮るとちょうどいい具合になるのですね。ちょっとだけ広角での演出をしたいときにピッタリであるというか。

 

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上の写真は安藤忠雄氏設計のお寺で撮ったもの。天井までの赤い格子が特徴的な場所でのポートレートです。見てください、広角でありながら画像の隅までしっかりと直線が出ています。素晴らしい!

 

初めて撮影で使って家に帰ってから画像を見て、発色がよくて歪みも出ない何ていいレンズだと感動しました。プロでもないのに画質なんて、自己満足だけかもしれませんが、こうした写真を撮れると無理して買ってことが報われるような気がします。

 

まとめ

 

フルサイズのカメラD750を買ってからの二年間は、これらの単焦点レンズだけを使って撮影をしていました。そのかいがあって、この焦点距離でこの距離で撮ったら、こういう構図になる、ということが頭にイメージできるようになりました。

 

後にズームレンズを使うようになってからも、その感覚は役にたっています。まずどういう構図の写真を撮るか、先に考えて、焦点距離を決めて足で被写体との距離を決めるようになっています。もし、こうした撮影経験が無かったら、立ち位置を決めてからズームレンズを回すような撮り方になっていたでしょう。

 

しかし単焦点レンズを揃えるのは費用もかかりますから、誰にでもおすすめできるやり方ではありません。

 

ズームレンズしかなくても、焦点距離を勉強するためには、ズームリングにテープを貼って、焦点距離を固定して撮影する方法もあります。

 

ただ、そのやり方はズームレンズの利便性(焦点距離を簡単に変更できる)を殺し、単焦点レンズの良いところ(軽さ、明るさ、キレのよさ、歪みのなさ)もない、味気ない作業のような撮影になってしまいます。

 

そんな撮影も、勉強することが目的の学生カメラマンであれば耐えれますが、社会人のアマチュアカメラマンは、仕事のストレスを解消するために写真を撮るわけですから、やはり楽しく写真を撮りたいところ。

 

大三元レンズを最初に買うのも良いですけど、単焦点レンズを工夫して使うのもズームレンズにはない喜びや楽しみがあります。ちょっとお金はかかりますが、趣味としての一眼レフの楽しみは、やはり単焦点レンズにあるように思えます。