住之江にあるモリムラ@ミュージアム(M@M)へ行ってきました!
ここは有名な芸術家である森村泰昌さんの私設美術館です。
一昨年にオープンしてから、そのうち行こうと思っていたにもかかわらず、行きそびれていました。最近写真で、自撮り作撮影を始めたのもあり、森村さんの自撮りアートが何か刺激にはなるのではないか、と思ったのです。
場所は住之江公園の近く、四つ橋線の北加賀屋駅の近くですね。
建物は目立つのですぐにわかります。何かの会社跡をリノベした感じ。2階に受付があります。こういうアトリエっぽい空間好きですね。ここは森村さんのご自宅なんでしょうか。昔、大阪JR環状線の高架下を借りて制作をされてましたね。
コロナマスクからインスパイアされた作品と、過去の有名な作品が2室に展示されていました。
森村さんは、自分自身で有名な絵画作品をリメイクすることで有名な芸術家です。活動は古くもう30年以上になります。私も昔から知っていて好きなアーティストです。ゴッホの自画像のなりきり作品が一番有名でしょうか。
森村さんはなかなか男前で、最初は自分の容姿をいかしたコスプレからはじめて、1980年代に、有名な絵画の自画像を使った絵画コスプレシリーズが話題になって有名になりました。今では紫綬褒章までもらえる世界的な芸術家なのです。有名な絵画の中に自分が入ったら面白いかも、というノリで始めたのかもしれません。
森村さんは大阪の芸術家ということもあり、イロモノ系やパロディ作家とか、笑いやわかりやすさが先行するアーティストと見られがちですが、それは表面的な評価であり、実は人間のある認知の仕組みを作品に生かした初めての人であると私は思っています。
以下は私の勝手な解釈なんですが、
絵画というものは、人間の姿を忠実に写し取るという目的があります。しかし忠実に表現する写実主義というのは写真に負けてしまうので、写真とは異なる表現方法としての絵画が発達しました。例えば印象派は、現実にはない色や形を自由に描き、心象を表現することを目指しました。
人間は視覚から入った情報を、すべて脳内で処理しているわけではありません。情報量を節約するために、抽象化し曖昧にすることを脳内で行っています。
実際に眼から入ってくる視覚的情報を、例えばフルサイズの画像データと考えると膨大な情報量です。そんな細かいデータを脳内で処理したら、脳の活動がパンクしてします。だから視覚的情報は、例えば256色のGIFくらいまで、データを劣化させて情報量を少なくしているのです。さらにデータ量を少なくするためには、漫画のように抽象化することもできるのが人間の脳です。
絵画はこの抽象化する脳の働きを表現しているようなものです。例えばゴッホだと荒々しい筆のタッチと絵具の凹凸によって顔が表現され、現実と異なる姿であるにも関わらず、人の顔として認識できます。さらに単にデータ量を少なくするだけではなく、そこに違う意味、ゴッホの場合は筆のぐるぐるタッチをのせることで、作家の感じている心象を鑑賞者に伝達させているのです。
森村さんは、そうした絵画の表現世界を、自分の実体をキャンバスにして、現実の中で再現することで、絵画的な抽象世界と現実世界との境界を作品の中で表現していると思います。鑑賞者は作品からその両方の世界を同時に感じることが出来るのです。
一見は有名絵画のパロディ作品のようで、「おもろいアート」と理解している人も多いかと思いますが、人間の認知の働きを芸術として表現した作品となっていて、芸術史上画期的なものであると私は思っています。
現在の森村さんの活動は、絵画のコピーを目指すのではなく、小道具に日本のものを入れたりと、違う表現になっているようです。手間を惜しんで適当になったということもあるかもしれませんが、新しい表現を模索されているのかもしれません。
と、アートを屁理屈で語るという野暮はさておき、私が森村さんの作品から何の刺激を受けたかというと、森村さんの作品は一枚の写真を撮るために、信じられないくらい手間をかけているのは間違いなく、私が写真をとるときにちょっと設定をメンドクサイと思うのは恥ずかしいと。
それと森村さんは、絵画を写真で再現するために、ライティングも工夫されていると思いますが、人への光の当たり具合を変えることで、人の印象は変わります。特にポートレートの光は大事です。