George Dureau(ジョージ・デュロー)の写真集を見つけたので購入しました。
ジョージ・デュローは、ロバート・メイプルソープの友人で、彼に影響を与えた写真家です。1930年生まれ。
写真集は、若い黒人や切断者のヌード写真をモノクロで撮ったもの。メイプルソープを撮った写真もありました。
男性器がしっかり写ってる写真が何枚かありましたが、卑猥な感じは全くありません。
写真を見ているうちに、左からのライティングではなく、右からの光の写真が多いと気づきました。
人は左側から差し込む光のほうが自然に感じるようで、絵画も左からの光で描かれることが多いです。フェルメールがその典型です。
あえて右からの光を描くひねくれ者の画家もいます。例えば曲者のカラバッジョとか。
右からの光はどことなく落ち着かないものを感じさせて、心に波風を起こす効果があるように思えます。
デュローが右からの光を意識して撮ったかどうかはわかりません。左からのライティングの写真もありましたから。単に撮影したスタジオの理由だけかもしれませんが、ライティングによる陰影効果に胸をうたれました。
誰かが撮った写真に感心して、いい写真だな、自分もこういう写真を撮りたい!と思うことがあります。
いろいろ工夫して同じように撮ってみると、「ああなんだ、こんな感じで撮ればよかったのか、意外とつまんないな。」と、急に興味が冷めることがあります。
撮り方がわからないときは、不思議で面白そうなのに、自分でやってみると地味な作業を重ねているだけだったり、作為的なあざとさがわかってしまったりして、なんだか白けてしまうのです。
これは、欲しいと思っていたものや、こんなことをしてみたいなあ、と憧れをもって夢見ていたことが、実現してみると、ああこんなものだったのかと期待しすぎたとわかることに近いのかもしれません。
憧れを持っていて、手に入れたときの満足を夢想しているうちに、それが素晴らしいものだと過剰な期待をし過ぎるのはよくあることです。
しかし、この写真集には、そういう憧れや撮ってみたいという気持ちを呼び起こすものはありません。
作家の感性や内面性というものが写真から溢れだしていて、テクニックよりも精神性を強く感じます。
自分には、こういう写真を撮る能力も撮る熱意もないや、と思ってしまいました。
ということは、この写真集が持つ魅力が私の中で色褪せることはないような気がします。