Cobalt's Photolog

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ニコンの先行き不安

私はニコンでカメラ機材を揃えていて、フィルムカメラや古いレンズなどもニコンの製品を収集しています。ライトなニコンファンです。だからニコンという企業のネガティブなニュースを読むと少々嫌な気分になります。

 

先日も、ニコンが前期650億円の赤字であり、一眼レフの国内生産を終了するという記事を読みました。ここ数年ニコンのニュースはリストラやシェア低下など暗い話ばかりです。ニコンの半導体設備事業も売り上げ激減しているそうなので、こうした状況が続くとそのうち上場廃止や倒産という事態もあり得るかもしれません。

 

カメラ業界からはすでに多くの老舗ブランドが退場しました。コンタックス、ペンタックス、オリンパス、ミノルタはフィルムカメラ時代は、世界にたくさん輸出をして日本の経済を引っ張ってくれました。これらのブランドのレンズをたくさん集めていた人も、今の私と同じような気分だったのかもしれません。もちろん我々ユーザーよりも、社員の人のほうがもっと深刻ではありますが。

 

ニコン低迷の原因としてネットでさんざん言われているのは、ミラーレスへの進出が遅れたこと。私もZ50を購入するまでは、一眼レフもいいところあるからと呑気に思ってましたが、使ってみると、ああこれはミラーレスのほうが伸びるのは仕方ないわ、と納得しました。

 

そういえば、3年前に欧州へ出張したときに、ニコンの販社に勤めていたという現地の人と話したことを思い出します。その人がニコンに勤めていたとき、ソニーのカメラの販売が増えてニコンが売れなくなってきたので、ニコンもミラーレスを早期に市場投入すべきだと販社から強く要求していたそうです。しかし日本本社は聞く耳を持たず、最後は販社の人員のリストラだったとか。(そのときに辞めたそうです)

 

当然、ニコンの技術部門ではミラーレスの開発を行っていたとは思いますが、タイミングが遅すぎでした。一眼レフも多少は売れていたので、潮目を読み違えたのでしょうか。

 

不確実な未来を予想して改革を遂行するということができない日本企業の代表例にも思えます。例えるなら致命的に思える病気にならないと生活スタイルを変えられない中年男、あるいは今までこれでやってきたんだから、これでいいんだ!と後継ぎの言うことを無視する創業者のようです。

 

これは私の個人的な想像ですが、ニコンの経営陣の中では、技術出身役員の発言力が営業やマーケの役員と比べて強いのではないでしょうか。ニコンという企業が伸びたのは、技術力であることは間違いありませんから。

 

私も技術開発系の人と一緒に仕事をしてきました。モノづくりをしてきた人達は、自分たちのやってきたことに対するプライドがあります。今まで会社を引っ張ってきた人は、頭を切り替えて自己否定の技術を推進できないことが多々あります。

 

そういえばニコンでは、APS-Cサイズしかなかったときも、フルサイズ機はいらない、とか言ってましたっけ。

 

これはニコンだけでなく、高度経済成長を引っ張ってきた日本の製造業全体にいえることでしょう。成功体験から意固地になって、引き際を見誤り、日本の輸出を支えてきた事業がどんどん弱体化しているのを見ると、とても残念な気持ちになります。

 

しかしニコンの場合は諦めるのはまだ早いと思うのです。ソニーやキヤノンには、まだあと一回くらいは巻き返しできるはず。

 

私が思うニコンの起死回生に必要なことは、まずは意識改革です。「報道カメラはニコン」といった過去の栄光を忘れてください。儲けるためにはナリフリかまっていられない、このままでは会社が潰れる、という商売の原点に戻ることが重要です。ニコンは軍事産業で大きくなったので、そんな社風時代があったのかわかりませんけど。

 

ニコンの強みはやはり光学系なので、レンズラインナップを早急に充実させる必要があります。Fマウントの一眼レフが売れたのは、他社にはないレンズの商品力があったからです。私もニコンを選んだ理由は、単焦点レンズがソニーやキヤノンよりも買いやすいからでした。

 

ですからZマウントレンズのラインナップが遅れているうちは、いつまでもキヤノンやソニーを捉えることはできません。それなのに、ロードマップはのんびりとした計画になっています。Zマウントの新レンズを、新規設計で出そうとするから遅くなるのです。

 

実績のある1.8Gシリーズと基本設計を同じにして、長さを伸ばしただけのレンズを安価に早く出さなかったのか私は不思議です。FTZをくっつけただけのレンズを出して、ニコンは手を抜いたと言われるのを恐れているのでしょうか。後玉の後ろに空洞があるレンズを出すのが恥ずかしいのでしょうか。

 

しばらくはFとZの両方のマウントを売るのだから、共通部品を使ったって誰も非難はしないのに、そういうところが技術のプライドなのだと思うのですよ。古いニコンユーザーの文句よりも、新しいユーザーを獲得しないと未来はありません。これから一眼レフのレンズなんて売れなくなるんだし、せっかくある資産が勿体ない。

 

もはやカメラの市場は縮小する一方。市場が拡大しているうちは、技術優先でもよかったのでしょうけれど、市場環境が変わってくると、発想を変えないといけないのでは。とにかくシェアをある程度回復して、筋肉質経営にして、利益率を二桁にするくらいに戻さないといけません。

 

私はニコンと心中してもよいという気持ちで機材を買ってきました。カメラやレンズ、スピードライトなどで、2百万以上は使っていると思います。将来性で選べばソニーかキヤノンでしょう。しかし買い替えるつもりはありません。このままニコンというカメラのブランドが無くなっても、機材を手放すことはないでしょう。

 

でも出来ればニコンというカメラブランドは生き残ってほしい。どんな手段を使っても頑張ってほしいです。