今回の記事は、黒い服を着たモデルの撮影についてです。
ポートレートの撮影で、モデルさんの服装を指定しなかったとき、モデルさんが黒い服を着てくる場合があります。年をとると着なくなるのですが、大人っぽい落ち着いた感じになる黒い服を好きな若い人は多いです。でもこの黒い服、撮影するときはちょっと大変なんですね。写真の色調が単調になるし、被写体と背景の両方を綺麗に撮りたいと思っていても、明暗の差が大きくなるため、モデルさんの黒い服が黒つぶれしたり、背景が白飛びすることがあるからです。
以下の写真で説明します。
何の工夫もなく正面から撮ったものです。服装も髪も黒いので、黒い固まりの中に顔が埋まっているようになってしまいました。せっかくの美人さんなのに、残念な写真です。正面からレフ板で光をあてればよくなりますが。
服のほうに露出をあわせると、今度は背景の緑が白飛びしてしまいました。
このように屋外においては、モデルさんの質が高くても、黒い服はいいポートレート写真を撮るのが難しくなります。黒い服は避けたほうがよいでしょうね。
ただ幸いにデジタル撮影では、後からいろいろ加工ができますので、黒い服でもなんとかすることは可能です。仕事ではなく趣味の撮影であれば、撮影が多少失敗したり効率が悪くても問題ありませんし。
先日上から下まで真っ黒の服装のモデルさんを撮影しました。撮影時より、画像処理で工夫をしてみました。事例をいくつかご紹介します。
1.モノクロでの表現にかえてみる
曇天の空と水面を背景にして撮影するとこんな感じになってしまいました。冬の雰囲気はありますが暗い。
モノクロに変換して明るさをコントラストをいじってみました。服のディテールが見えますので、絵としてバランスがとれました。
もうひとつモノクロのサンプルを。元写真がこちらになります。お顔はキレイに撮れていますが、やっぱり画面が黒すぎるのが気になります。
セピアにして周囲をぼかしてみました。眼差しが強調された写真になりました。
2.HDRでの表現を使う
同じく水面の写真です。これも黒つぶれがはなはだしい写真です。失敗といってもかまいません。
上の写真をHDRモードを使って加工すると、絵画のような絵になります。黒つぶれしたと思っていても、フルサイズのデジカメはしっかり黒の諧調を記録してくれていますのでいいですね。
もうひとつHDRを使った作成です。庭園で撮影しましたが、やはり黒べったりの絵になってしまいました。
HDRで色味を増やし、服のドレープ感も出るようにしました。日本の庭園とファッションモードの両立の絵になります。
3.明度と彩度、色調を調整する
綺麗なお顔を撮りましたが、うーん何か物足りない。服装が黒いと物足りなさが出てくるんです。
昔のカラーフィルムで撮った感じに修正してみました。
4.雪を降らせてみる
撮影をしていると、粉雪が降ってきました。黒い服は雪を目立たせますので、ラッキー！と思ったのですが、すぐに止んでしまいました。Affinity Photoを購入すると、雪の効果を出せるアセットが付属していました。雪の画像なんて使う時ないしなー、と思っていましたがやっと使える時が訪れました。
オリジナルの画像です。ちらちらと雪がふってますが、画像のノイズみたい。
雪を降らせます。粉雪です。
もう一枚。雪降ってきたらだいたいの人がするポーズです。やっぱり服が黒いので地味な印象の写真になっています。
雪を降らせると、よいい雰囲気の写真になりました。黒い服によって雪が目立ちます。
5.逆光のフレアを強調する
私はレンズオタクなので、レンズを使ったフレア写真を撮ります。フォトショップで加工もできますが、やはり実際に撮ったほうが感動があります。黒い服と黒い髪はフレアを目立たせるのによいと思いました。
オリジナル画像。レンズはNIKKOR24-70ｍｍｆ2.8を使ってます。
HDRを使うと以下のような感じ。
オリジナル画像。濃いめのメイクだとフレアに負けません。
加工後。いろいろ効果を重ねてます。
以下オリジナル画像
加工後です。神々しい感じをイメージしました。
以上、黒い服装でも工夫すると楽しめますよ、という事例でした。何かのご参考になれば幸いです。
今回撮影したモデルさんは、高校生のなんこさんです。上の作例は難ありの写真ばかり選んでますが、以下の写真のように笑顔が素敵な可愛らしい女の子でした。
撮影は嵐山の天龍寺とその周辺で、お母様の付き添いのもとで行いました。お母様がとても面白い方で、撮影の集中力がかなり低下してしまいましたが、楽しい撮影でいい休日になりました。
